1on1面談でフォロワーシップを育む:主体的な貢献を引き出す実践ガイド
あなたはチームリーダーとして、メンバーの主体的な行動を促し、その貢献を正当に評価することに課題を感じていらっしゃるかもしれません。日々の業務に追われる中で、個々のメンバーと深く向き合う時間を確保することも容易ではないでしょう。しかし、効果的な1on1面談は、そうした課題を解決し、チームのフォロワーシップを育成するための強力なツールとなり得ます。
この記事では、1on1面談を通じてメンバーの主体性を引き出し、チーム全体のフォロワーシップを高めるための具体的な進め方と実践的なヒントをご紹介します。
導入:1on1面談がフォロワーシップを育む場となる理由
チームにおける「フォロワーシップ」とは、単にリーダーに従うことではありません。チームの目標達成に向けて、メンバー一人ひとりが自律的に考え、行動し、積極的に貢献する姿勢を指します。リーダーの指示を待つだけでなく、自ら課題を発見し、解決策を提案し、他のメンバーと協力しながら成果を追求する。このようなフォロワーシップが強いチームは、変化に強く、高いパフォーマンスを発揮します。
しかし、このフォロワーシップは自然と生まれるものではありません。リーダーからの意図的な働きかけ、特に個別対話の機会が重要になります。その最たるものが1on1面談です。1on1面談は、単なる進捗確認の場ではなく、メンバーの成長を支援し、主体性を育み、信頼関係を深めるための貴重な時間であると捉えることが大切です。
1on1面談がフォロワーシップに与える影響
効果的な1on1面談は、フォロワーシップの醸成に以下のような影響を与えます。
- 信頼関係の構築と心理的安全性: 定期的な対話を通じて、リーダーとメンバーの間に信頼関係が築かれます。これにより、メンバーは自分の意見や課題を安心して話せる「心理的安全性」を感じるようになり、本音でのコミュニケーションが可能になります。
- 主体性の尊重と内発的動機づけ: リーダーがメンバー自身の考えや意見を尊重し、自ら解決策を導き出すことを促すことで、メンバーの内発的な動機づけが高まります。やらされ仕事ではなく、自らの意思で取り組む姿勢が育まれます。
- 貢献の可視化と適切なフィードバック: 日常業務では見過ごされがちなメンバーの細やかな貢献や工夫をリーダーが具体的に認識し、フィードバックすることで、メンバーは自分の仕事がチームに与える影響を理解し、さらに積極的に貢献しようという意欲が湧きます。
フォロワーシップを高める1on1面談の具体的な進め方
ここでは、実践的な1on1面談のステップをご紹介します。
1. 面談前の準備:目的と期待値の明確化
1on1面談を効果的にするには、お互いにとって有意義な時間とするための準備が不可欠です。
- メンバーへの事前共有と議題の依頼: 面談の数日前に、メンバーに「今回の1on1では何について話したいか」を考えてもらいましょう。例えば、「最近困っていること」「挑戦したいこと」「共有したい情報」「リーダーに期待すること」など、いくつかの選択肢を提示するのも良い方法です。これにより、メンバーは自ら面談のテーマ設定に関与し、主体的に臨む準備ができます。
- リーダー側の目的設定: リーダーも、「メンバーの成長支援」「特定の課題解決のサポート」「チームビジョンの浸透」など、今回の面談で達成したい目的を明確にしておきます。これにより、対話の方向性がぶれにくくなります。
2. 面談中の実践:メンバーの主体性を引き出すコミュニケーション
面談中は、メンバーが安心して話せる環境を作り、主体的な思考を促すことが重要です。
- 傾聴と共感: メンバーの話を途中で遮らず、最後まで耳を傾けます。話している内容だけでなく、その背景にある感情や意図にも意識を向け、共感の姿勢を示しましょう。「そう感じていらっしゃるのですね」「それは大変でしたね」といった言葉で、相手の気持ちを受け止めることが大切です。
- 主体性を促す「問いかけ」の技術: メンバーが自ら考え、行動を決定できるよう、オープンエンドな質問(はい/いいえでは答えられない質問)を多用します。
- 「この状況について、あなたはどう考えていますか」
- 「この課題に対して、どのような選択肢が考えられますか」
- 「その選択肢の中で、最も効果的だと考えるものは何ですか。なぜそう考えますか」
- 「次にどのようなアクションが考えられますか」
- 「そのために、私にできるサポートはありますか」 これらの問いかけは、メンバーに内省を促し、自己解決能力を高める手助けとなります。
- 具体的な貢献の認識とフィードバック: メンバーの行動や成果を具体的に認識し、ポジティブなフィードバックを伝えましょう。
- 「先日、〇〇のプロジェクトであなたが△△という工夫をしたことで、チームの作業効率が□□%向上しましたね。素晴らしい貢献だと思います。ありがとう。」 行動と結果、そしてそれがチームに与えた影響を具体的に伝えることで、メンバーは自分の仕事の価値を実感し、モチベーションを高めます。
- 成長に向けた対話と目標設定: メンバーのキャリア志向やスキルアップの意欲について話し合い、今後の成長に向けた具体的なアクションを一緒に考えます。
- 「今後、どのようなスキルを伸ばしていきたいと考えていますか」
- 「この分野で、今後挑戦してみたいことはありますか」 次回の1on1までにできる小さなステップを合意することで、具体的な行動につながりやすくなります。
3. 面談後のフォローアップ:継続的な関係構築のために
1on1面談は、一度きりで終わらせず、継続的な対話の一部として位置づけることが重要です。
- 面談内容の簡単な記録と共有: 話し合った内容や合意事項を簡潔に記録し、必要に応じてメンバーにも共有します。これにより、認識のずれを防ぎ、次回の面談に繋げることができます。
- 合意したアクションの進捗確認とサポート: 面談で合意したアクションについて、その後の業務の中で進捗を確認し、必要に応じてサポートを提供します。これにより、リーダーがメンバーの成長に関心を持っていることを示し、信頼関係をさらに深めることができます。
よくある課題と解決策
- メンバーが話してくれない場合:
- 解決策: 最初から深い話を求めず、まずは業務以外の軽い話題から入り、心理的安全性をゆっくりと醸成します。リーダー自身が最近の悩みや挑戦をオープンに話すことで、メンバーも話しやすくなることがあります。傾聴に徹し、メンバーが話し終えるのを焦らず待つ姿勢が重要です。
- 具体的なアクションに繋がらない場合:
- 解決策: 目標設定の際に、より具体的で測定可能な小さなステップに分解することを提案します。リーダーが一方的に指示するのではなく、「何から始めるのが良いと思いますか」「そのステップは、どのような基準で達成と判断できますか」といった問いかけで、メンバー自身にアクションプランを考えさせることが大切です。
まとめ:継続的な対話がチームを強くする
フォロワーシップは、チームのパフォーマンス向上に不可欠な要素です。そして、そのフォロワーシップを育む上で、1on1面談はリーダーにとって非常に有効な手段となります。
今回ご紹介した具体的な進め方や問いかけのヒントは、明日からでもあなたのチームで実践できるものです。一度で完璧な1on1面談を目指すのではなく、まずは試してみて、メンバーの反応を見ながら改善を重ねていくことが大切です。継続的な対話を通じて、メンバー一人ひとりの主体性を引き出し、貢献を認め、成長を支援することで、あなたのチームはより強く、より自律的な組織へと進化していくことでしょう。